2022年 1 1月9日(水)

2022年度前期・外国語科目ベストティーチャー賞に選んでいただき,今日は授賞式がありました。

 

 

大学教育推進機構長の大村先生より,立派な表彰状をいただき,こんなに素晴らしいものを準備していただいて,本当にありがたく思いました。

 

 

そういえば,団体としての業績ではなく,個人の業績で表彰状をいただくのは,中学校の時の(昔!)自由研究の時以来かもしれません。 私は,周りの人や環境に恵まれていたために,いろんなことがそこそこできるようになった方だとは思いますが(ピアノとか絵画とかトロンボーンとか),どの領域も本当に「そこそこ」までにしか至らない(どこでも勝てない)普通の人でしたので,表彰状とか表彰式って,自分とは縁のないものだと思っていました。 しかし,こんな普通の人間でも,同じことをコツコツと継続していれば,表彰状をいただける幸運が巡ってくることもあるんですね。 中学校の自由研究の時も表彰状をもらって心が弾んだのを記憶していますが,大人になっても,表彰状って,やっぱり嬉しいものです。

 

 

これからも神戸大学の学生の皆さんが新しい学びを実感できるような授業をデザインし,提供していきたいと思います。 表彰式で,また新しいスタートラインに立った気持ち気持ちです。

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年9月24日(土)

青山学院英語教育研究センターにて,「アカデミックライティングの規範とは:好まれる語られ方の変化」という題目で講演をさせていただきました。

 

 

 

コロナ以降,多くの研究会が実施形態をオンラインにシフトしていく中で,この度の講演会は対面形式での開催でした。 台風の影響で朝から悪天候,おそらく参加者ゼロとなるのではないかと思いましたが,大雨にも関わらずたくさんの方々にご参加いただきました。 

 

 

 

1時間半という長時間の講演会となりましたが,私の話に熱心に耳を傾けてくださり,また貴重なコメントや質問をたくさんいただき,私にとっても非常に有意義な時間となりました。 

 

 

 

悪天候の中,私の講演を聴きにわざわざ青山まで足をお運びくださった先生方,ありがとうございました。 そして,この度の講演会を主催してくださった青山学院英語教育研究センターの皆様,コーディネーターの高木亜希子先生,改めまして深く感謝しています。

 

 

 

 

2022年9月1日(木)

2020年4月に昇任し,職位が変わったのですが,ちょうどコロナウィルス感染が拡大し始めた時期と重なり,ありとあらゆる行事がオンライン化する中で新しい人と会う機会もほとんどなくなり,「名刺」を作り替えるタイミングを逃していました。

 

 

2022年になり,少しずつ対面の行事も増えてきましたので,2年遅れになりましたが,新しい名刺を作っていただきました。 

 

 

神奈川県にある名刺専門の会社に依頼をしました。 文字の配置,書体やサイズ,紙のクオリティなど,X, Y, Z...と複数の変数があり,それぞれの変数につき多様な選択肢があるもので,深く考え始めると,「Xはいいけれども,Yは気に入らない」,「Yは直ったが,今度はZが不自然だと思う」... といったようにこだわりがどんどん強くなっていき,結果的に,とてもめんどくさい顧客になってしまいました。 

 

 

何度かやりとりをさせていただいた後,最終の完成品を送っていただきました。 表面と裏面の下部にうっすらと引かれたブルーの線が神戸らしくて気に入っています。 今後この名刺をお渡しする方が,どの程度,このブルーの線に気づいてくれるか分かりませんけれども...。

 

 

何はともあれ,職位が変わり,ブルーの線が引かれた新しい名刺を見て,気持ちがリセットされました。 2年間放置していましたが,自分という作品の「ラベル」でもある名刺は,思っていた以上に大事な存在であることに気づかされました。

 

 

 

 

2022年6月1日(水)

京都大学の柳瀬陽介先生が『英語科学論文をどう書くか:新しいスタンダード』の書評を書いてくださいました。

 

 

https://yanase-yosuke.blogspot.com/2022/05/2021.html

 

 

「私自身学術英語ライティングを教える者として、大変勉強になりました。この本が少しでも多くの人に読まれればと思い、このブログでも紹介する次第です」というコメントをいただきました。 このようなお言葉自体とても嬉しく励みになるものですが,柳瀬陽介先生に言っていただけたということがずっしりと心に響きます。

 

 

本を書き上げるまでのプロセスは,とても長く,そして孤独な時間ではありましたが,ようやく形になり,多くの人の手元に届いて,何かの形で本がそれぞれの人にとって役に立っていることを知ると,本当に頑張って良かったと思えます。

 

 

 

 

2022年5月12日(金)

この度,大学教育学会が認定する「JACUEセレクション 2022」の受賞者が発表され,私が執筆・刊行した著書『英語科学論文をどう書くか:あ新しいスタンダード』(ひつじ書房)への「JACUEセレクション 2022」の授与が決定しました。

 

 

授賞式は,2022年6月4日(土)に岡山理科大学にて行われる予定です。

 

 

神戸大学の全学ホームページにも掲載していただきました。

 

 

このことに満足することなく,新たな挑戦への出発点に立った気持ちで,より良い作品を発信していけるよう,今後も努力を重ねたいと思います。

 

 

 

保田幸子著(2021)『英語科学論文をどう書くか:新しいスタンダード』ひつじ書房

◇選定理由(抜粋

 本書は、英語による科学論文執筆のガイドブックであるが、類書と異なるのは、副題として「新しいスタンダード」と掲げているように、「書き手の個性や主体性を読み手に伝える」という新しい視点に立っている点である。著者が指摘するように「論文では客観的事実のみを書く」や「一人称の使用や曖昧な表現は避ける」などが標準とされてきた。しかし、近年では書き手の個性や主体性を明示的に示すことが推奨されていることを国際誌の投稿ガイドラインや掲載された論文の計量的分析によって示している。全体は、準備編、基本編、発展篇の3部で構成されており、準備編では、科学論文から主観性が排除されてきた歴史的背景、主観表現の方法を数多くの事例をもとに解説している。基本編では、科学論文のストーリー・テリングという観点から論文の流れを作る「Move」という概念を導入し、情報展開の流れについて解説する。発展篇では、さらに「書き手の個性や主体性を読み手に伝える」文章表現法を具体的な豊富な事例を用いで丁寧に解説している。本書の各説にはKey Questionが立てられ、多くのExerciseを解答することで理解が深まるように構成されている。定型表現の用例も非常に多く、英語論文を執筆するときに参考になり有益である。

2022年3月31日(木)

令和3年度後期,全学共通教育ベストティーチャー賞,「学生から高い評価を受けた教員」に選んでいただきました.

 

 

遠隔授業の中,学生の皆さんには不便をかけることも多かったと思いますが,毎週,期待以上のクオリティの課題を提出してくれました.

 

 

当たり前のことですが,学生の皆さんが生きてきたこれまでの20年と,私が20歳の時に生きてきた20年は,全く異なります.明らかにオーバーラップしていない20年.学生の皆さんは,神戸大学に来るまでの20年の間,私が見ていない世界を見て生きてきています.なので,世の中の見方も考え方も違って当たり前です.

 

 

それを,学生さんが書いた文章や話から知るのは,私にとって本当に刺激になります.実は,私が大学に就職して一番楽しんでいることでもあります.

 

 

ぜひそういう話の仲間に入れてほしい.

 

 

いつもそんな気持ちで授業をしています.

 

 

 

2022年 3月17日(木)

大阪市立大学大学院 文学研究科にて,英語ライティングセミナーの講師を務めさせていただきました。

 

 

2018年から毎年招聘していただき,こちらのセミナーで講師を務めさせていただくのは,今回が4度目になります。

 

 

今年の講義では,英語論文の書き方について,語法 (usage),文体 (style),ストーリー (story) という3つの観点から考えるタスクを作りました。また,近年,性能が高まりつつある機械翻訳が,人間の論文執筆をどこまで助けてくれるかという問いを出発点に,機械翻訳に頼れる領域,頼れない領域について考える時間も設けました。

 

 

今回の講義の準備をする過程で,学生がよく使っているという「DeepL」という機械翻訳を使ってみました。ある論文で書いた日本語のアブストラクトを入力すると,瞬時に,同じ意味を表す英文が表示され,まずその速さに驚きました。しかし,よく英文を見てみると,確かに,日本語の通りに訳されているのですが,英語としてなんとなく不自然,「この文脈でこの表現は普通は使わないよなあ...」という表現が散見されました。例えば,次のような英文です。

 

 

「AはBとして位置付けられてきた」→ "A has been positioned as B"

 

 

"has been positioned as" は確かに「位置付けられてきた」なのかもしれませんが,この文脈では ,"A is regarded as B" が英語としては自然だろうと思いました。 

 

 

このように,機械翻訳は,近年その性能がますます高まっているとはいえ,やはり,文脈を考えた上で社会文化的に最も適切な意味資源 (meaning-making resources) を選択するというところは,人間の目が必要ではないか...というのが私が受けた印象です。 どのような表現を書き手が選ぶかは,文脈や文章の目的,読み手のニーズなどによって大きく変わり,正解は一つではありません。 パターン化ができないものを機械翻訳が「予測する」ことはできません。 学習ツールとしての機械翻訳のメリットを全く否定するわけではありませんが,あくまで「ツールであって万能ではない」ということではないかと思います。

 

 

セミナーにご参加くださった皆様,ありがとうございました。